『穴の町』
タイトル 『穴の町』
作者 ショーン・プレスコット
訳者 北田絵里子 (https://twitter.com/erk_ktd)
作者はどんな人?
この作品の作者は、ショーン・プレスコット。オーストラリアニューサウスウェールズ州の小さな町、マニルドラ出身。 音楽雑誌の編集者をしながら、同人誌や、文芸誌に短編を発表。この『穴の町』がデビュー作。
どんな話?
本を書くためにとある町を訪れ、スーパーの陳列係をしながら、住人と触れ合っていく。寂れたバーのウェイトレス、誰も乗らないバスの運転手、誰も聞かないコミュニティラジオのDJなどなど。
主人公はそんな町にどんどん馴染んでいくのだが・・・
翻訳者さん曰く、
『シュールという便利な言葉を使いたくなかったけどやっぱり、シュールがごろごろ詰まった小説としか言えません!』
ショーン・プレスコットの『穴の町』、本日発売になりました。どうぞよろしくお願いします。シュールという便利な言葉を使いたくなかったけどやっぱり、シュールがごろごろ詰まった小説としか言えません! pic.twitter.com/lDIx8jV70L
— Eriko Kitada (@erk_ktd)
舞台はどこ?
小説の舞台は、作者の出身地でもある、オーストラリアの、ニューサウスウェールズ州の中西部。
ニューサウスウェールズ州はシドニーのある州。
© OpenStreetMap contributors
話の舞台は、だいたい丸をつけたあたり(あくまでも推測)。
主人公は、「ニューサウスウェールズ中西部の消えゆく町々」についての本を書こうとしている。
町はどんな感じ?
主人公の、”ぼく”(売れない作家志望)が、ニューサウスウェールズ中西部へやってきて、働いているのが、大手スーパーの『ウールワース』。
こんな感じ
『ウールワース』は、チェーン店なので他にもたくさんあるのだが、話の内容から見てここではないかと。
この作品には、他にも実際に存在するお店がたくさん出てくる。
冒頭部分で見てみると、
ディスカウントストアの、『ビッグ W』
CDショップの、『サニティ』
パン屋の『ベイカーズ・デライト』
などなど。
上から見るとこんな感じ。
© OpenStreetMap contributors
- ”ぼく”が働くスーパー、『ウールワース』
- ディスカウントストア、『ビッグW』
- CD ショップ、『サニティ』(仕事が見つかったらどれを買おうか、品定め)
- パン屋、『ベイカーズ・デライト』(チーズとベーコンのパンを買う)
3と4は、ショッピングモールの中にある。
『穴の町』というタイトルだけあって、町の描写がとにかく細かい。
店名や地名を追いながら、読みすすめるのも面白い。
しかし、この小説に、”景気のいい人”は出てこない。
|
こんな人には、オススメしない
景気のよくない(売れていない)物書きや、音楽家は、この小説を読むことで、なんとも言えない後味の悪さや、自分の今に対してバツの悪さを感じてしまうかもしれない。したがっておすすめしません。
この小説をオススメしない人、
1.売れない作家
2.売れないミュージシャン
3.非正規労働者
理不尽ゲーム
タイトル: 理不尽ゲーム
作者: サーシャ・フィリペンコ
訳: 奈倉友里
まずは、ベラルーシについて。
ベラルーシってどこ?
場所はここ、
・人口約946万人
・国の広さは、207,560平方キロ。だいたい、朝鮮半島と同じくらいの広さ。
・首都:ミンスク。
大統領のアレクサンドル・ルカシェンコは、ヨーロッパ最後の独裁者と呼ばれる。彼は26年にわたってベラルーシを統治している。
ベラルーシといえば。
2021年夏の東京オリンピックに選手として来ていた、クリスツィナ・ツィマノウスカヤが、帰国命令を拒否。その後、ポーランドに亡命したことで、世界的にも話題になった。
ベラルーシ国内は、グーグルによるストリートビューは無く、部分的に個人が撮った写真が、ストリートビューとして表示される。
街の様子はこんな感じ。
深みはないが、普通の地方都市の一コマといった印象。
どんな話?
具体的に、ベラルーシやミンスクといった地名は出てこないが、この作品ではベラルーシの閉塞感に包まれた日常が描かれている(と思われる)。
16歳の主人公、フランツィスクは、芸術専門学校で音楽を学ぶ学生。不運な事故で、昏睡状態におちいる。そして、十数年後に奇跡的に意識を取り戻した彼の見た世界は・・・?
主人公の母親が昏睡状態から戻ったら東西冷戦が終わっていて、世界がすっかり変わっていた、という映画『グッバイ・レーニン』と少し似ているな、と思ったのだが、はたして、『理不尽ゲーム』の主人公は、どんな世界に戻ってきたのか・・・?
|
作者はどんな人?
作者の、サーシャ・フィリペンコは、1984年にベラルーシのミンスクで生まれる。
国立芸術専門学校の音楽科を卒業後、欧州人文大学へと進む。 この大学は自由な校風が災いして、作者の在学中に閉校になる(その後、隣国リトアニアで再開校される)。
そんな作者は、当然今のルカシェンコ体制に不満を持っており、それは『理不尽ゲーム』の中にも色濃く出ている。
作者自身の前書きによると、この作品はミンスクの本屋では売られていない。
そして、『僕がただひとつ心から願っているのは、いつかきっと、僕の生まれ育った国で、この本が時事性を失うことです』と、述べている。
今(2021年)の様子は?
ベラルーシ国内では、今も反体制派の運動が続いている。しかしながら、2021年5月に、反体制派のジャーナリスト、ラマン・プラタセヴィチ氏が、飛行機でギリシャからリトアニアに向かう最中、ミンスクに強制着陸させられて、拘束される。
また、2021年8月には、ウクライナで、ベラルーシから逃げてくる人の援助をしていた、活動家のビタリー・シショフ氏が、首吊状態で、死体で見つかった。
このように政府の弾圧は日増しに強くなっている。
『理不尽ゲーム』
|
こんな人には、オススメしない
・敷かれたレールに乗れなかった人
・極端に友達の少ない人
ベラルーシのような民主的でない”ヒドイ国”にも、社会の「敷かれたレール」というものはあって、そのレールに乗れば、平々凡々の暮らしはできたりする。安月給を受け取り、そして気のおけない仲間と、こっそり政権の悪口言い合って生きていく、みたいな。
日本のような、民主的で”素晴らしい国”にいながら、平々凡々のつまらない日常が送れていない人にとっては、作者や主人公の葛藤を自分の中に投影できないかもしれない。
プライバシー・ポリシー
広告の配信について
(当サイトは第三者配信の広告サービス「Googleアドセンス」を利用しています。)
広告配信事業者は、ユーザーの興味に応じた広告を表示するために「Cookie(クッキー)」を使用することがあります。
Cookieを無効にする設定およびGoogleアドセンスに関して、詳しくはこちらを御覧ください。
(また、『重い小説の軽い読書メモ』は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。)
第三者がコンテンツおよび宣伝を提供し、訪問者から直接情報を収集し、訪問者のブラウザにCookie(クッキー)を設定したりこれを認識したりする場合があります。
アクセス解析ツールについて
当サイトでは、Googleによるアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」を利用しています。トラフィックデータの収集のためにCookieを使用しています。
このトラフィックデータは匿名で収集されており、個人を特定するものではありません。
Cookieを無効にすることで収集を拒否することが出来ますので、お使いのブラウザの設定をご確認ください。
この規約に関して、詳しくはこちらをクリックしてください。
当サイトへのコメントについて
当サイトでは、スパム・荒らしへの対応として、コメントの際に使用されたIPアドレスを記録しています。
これはブログの標準機能としてサポートされている機能であり、スパム・荒らし等への対応以外にこのIPアドレスを使用することはありません。
当サイトでは、次に掲げる内容を含むコメントは管理人の裁量によって承認せず、削除する事があります。
・特定の個人または法人を誹謗、中傷するもの。
・極度にわいせつな内容を含むもの。
・禁制品の取引に関するものや、他者を害する行為の依頼など、法律によって禁止されている物品、行為の依頼や斡旋などに関するもの。
・その他、公序良俗に反し、または管理人によって承認すべきでないと認められるもの。
免責事項
当サイトで掲載している画像の著作権・肖像権等は各権利所有者に帰属致します。権利を侵害する目的ではございません。
記事の内容や掲載画像等に問題がございましたら、各権利所有者様本人が直接メールでご連絡下さい。確認後、対応させて頂きます。
当サイトからリンクやバナーなどによって他のサイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報、サービス等について一切の責任を負いません。
当サイトのコンテンツ・情報につきまして、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、誤情報が入り込んだり、情報が古くなっていることもございます。
当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
運営者: omokaru_dokusho
初出掲載: 2021/08/05