理不尽ゲーム
タイトル: 理不尽ゲーム
作者: サーシャ・フィリペンコ
訳: 奈倉友里
まずは、ベラルーシについて。
ベラルーシってどこ?
場所はここ、
・人口約946万人
・国の広さは、207,560平方キロ。だいたい、朝鮮半島と同じくらいの広さ。
・首都:ミンスク。
大統領のアレクサンドル・ルカシェンコは、ヨーロッパ最後の独裁者と呼ばれる。彼は26年にわたってベラルーシを統治している。
ベラルーシといえば。
2021年夏の東京オリンピックに選手として来ていた、クリスツィナ・ツィマノウスカヤが、帰国命令を拒否。その後、ポーランドに亡命したことで、世界的にも話題になった。
ベラルーシ国内は、グーグルによるストリートビューは無く、部分的に個人が撮った写真が、ストリートビューとして表示される。
街の様子はこんな感じ。
深みはないが、普通の地方都市の一コマといった印象。
どんな話?
具体的に、ベラルーシやミンスクといった地名は出てこないが、この作品ではベラルーシの閉塞感に包まれた日常が描かれている(と思われる)。
16歳の主人公、フランツィスクは、芸術専門学校で音楽を学ぶ学生。不運な事故で、昏睡状態におちいる。そして、十数年後に奇跡的に意識を取り戻した彼の見た世界は・・・?
主人公の母親が昏睡状態から戻ったら東西冷戦が終わっていて、世界がすっかり変わっていた、という映画『グッバイ・レーニン』と少し似ているな、と思ったのだが、はたして、『理不尽ゲーム』の主人公は、どんな世界に戻ってきたのか・・・?
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作者はどんな人?
作者の、サーシャ・フィリペンコは、1984年にベラルーシのミンスクで生まれる。
国立芸術専門学校の音楽科を卒業後、欧州人文大学へと進む。 この大学は自由な校風が災いして、作者の在学中に閉校になる(その後、隣国リトアニアで再開校される)。
そんな作者は、当然今のルカシェンコ体制に不満を持っており、それは『理不尽ゲーム』の中にも色濃く出ている。
作者自身の前書きによると、この作品はミンスクの本屋では売られていない。
そして、『僕がただひとつ心から願っているのは、いつかきっと、僕の生まれ育った国で、この本が時事性を失うことです』と、述べている。
今(2021年)の様子は?
ベラルーシ国内では、今も反体制派の運動が続いている。しかしながら、2021年5月に、反体制派のジャーナリスト、ラマン・プラタセヴィチ氏が、飛行機でギリシャからリトアニアに向かう最中、ミンスクに強制着陸させられて、拘束される。
また、2021年8月には、ウクライナで、ベラルーシから逃げてくる人の援助をしていた、活動家のビタリー・シショフ氏が、首吊状態で、死体で見つかった。
このように政府の弾圧は日増しに強くなっている。
『理不尽ゲーム』
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こんな人には、オススメしない
・敷かれたレールに乗れなかった人
・極端に友達の少ない人
ベラルーシのような民主的でない”ヒドイ国”にも、社会の「敷かれたレール」というものはあって、そのレールに乗れば、平々凡々の暮らしはできたりする。安月給を受け取り、そして気のおけない仲間と、こっそり政権の悪口言い合って生きていく、みたいな。
日本のような、民主的で”素晴らしい国”にいながら、平々凡々のつまらない日常が送れていない人にとっては、作者や主人公の葛藤を自分の中に投影できないかもしれない。